【森奥のラボ】
「あっれ～？おっかしいなぁ…」
ハイネルロッカ・ラボ。
その地下の部屋でガチャガチャとゴミ袋の中を引っ掻き回す姿があった。
うっすらそばかすの掛かった顔に赤毛の青年。名はエドワード。
「ん、なんだこれ。…うぇっぷ！さ、酒！！？
飲み終わったらちゃんと分別して捨てろって言ったのにぃ！」
酒瓶を隅へ置き、再び袋をあさる。
「たしか、昨日ここに捨てたはず。」と、突っ込んでいた手を止め小さな部品をつまみ出す。
「おーコレコレ♪バラせば中身の配線、まだ使えるんだよなっ」
それを握り締め、口笛を吹きながら地下の部屋を出て、階段を上がる。

「待たせたな、エコー。コレ繋げたら充電頼む。」
エコーと呼ばれた生き物がヴー…ンという音とともに現れた。
メカっぽい彼はエドワードの声霊である。
「マスタ、体臭、アルコール反応。クサッ」口調もやっぱりメカっぽい。
「エドちゃん、隠れてお酒飲んでただりか。クサッ」独特の喋り口調。
長い耳をもったレビ族のピュエットだった。
彼女はソファーにどっかり座り、両足をどっかりテーブルに乗せていた。
「ガキンチョが大人ぶってんじゃネーヨ。博士にチクるだり。」
「酒なんか飲んでねーよ！つーか飲めねぇし。」
そう言いながら先ほど手に入れた部品の中身の配線を取り出し、
装置らしき物に取り付け、別の線をエコーの胴体部分と繋げる。
「充電開始、終了マデ約5分。」エコーがその装置の充電を始めた。
「あのさ、ピュエ。その格好どうにかなんない？」エドワードは困った顔で言う。
「何がだり？」ピュエットは首を傾げた。
「オッサンみたいな座り方はやめろって言ってんの！」
「ろがどんな格好でいようと勝手だろ。先輩に向かって偉そうだなおまい。」ピュエットは無愛想な顔をさらに無愛想にする。
彼女はエドワードがここに押しかけるずっと前からいる。
博士から前に「我輩の少年時代から変わらずあの姿なのだ」と聞いたことがあった。
いったい何歳なのだろうか…？年頃ってワケでもなさそうだ。
「お前、一応　女なんだしさ。」
「一応って何だりよ、エドちゃん。一応って。」
「おぃ！鼻の穴かっぽじるな！！」
「あ゛？ニオイ嗅いでるだけだりが？」
「いや違う、小指が穴行ってた！！つーか何で指のニオイ嗅ぐ必要がある！？」
「鉛筆の芯だり。これもさ、爆弾の材料になるの知ってるだりか？」と不適な笑みをニンマリと浮かべるピュエット。
エドワードはテーブルに広げられた紙を見た。
半分はピュエットの落書きだが、爆弾の設計図も書かれていた。
「まーた、爆弾か？」
「なんだよ、おまいの役に立たないポンコツ品より役立つだりが？」
「ピュエの爆弾は役立ってないだろが。この前だって胡椒爆弾を…」
「アレが無かったらエドちゃんボッコボコだったりが？」
「…う゛。」
そうだった。ちょっと前に雑貨屋で可愛い娘が住み込みで働いているのをエルトナに聞き、
声を掛けたら血相を変えた男にひたすら追いかけられたのだった。
「オミちゃん可愛かったなぁ。あの純情さがなんていうか…。あーでもエルトナちゃんも、あの天然さが…。」
「おまい、ボッコボコにされれば良かっただりな。」
「…あ、そういえばここにおいてあったボルト知んない？」
「ろは知らないだり。」
「テーブルに置いておいたんだけどさ。」
「ろは知らないだり。」
「アレがないとこの装置、充電する意味がないんだけどなぁ…」
「ろは知らないだり。」
「ピュエット、心拍数・157。スリー…」
「ポンコツ太郎、おまいウルサイだり！」
バコーン！！
エコーの頭に衝撃弾が炸裂。
「ピ・・ピ、ガガガー……」
「エ、エコー！！？おい、しっかりしろ！！」
「身体検査はいいんだり！！」
「格好は気にしなくともそっちは気にするんだな…」
「なんだよ、ハナクソ爆弾くらいたいだりか！？」